【EDH】赤黒バーン【前編】

※長文注意
※謎の堅苦しさ注意

●構築背景
赤っぽいデッキを組むに当たり、赤の特徴と赤でしか出来ない事を考える。
これについては今まで散々書いてきたわけで、赤単を組んできた方々も弱点を克服し強みを活かす様々なアプローチをしてきた。
・サーチの弱さをジェネラルをコンボの主軸に据えてカバー:キキジキ、クレンコ等
・ジェネラルがサーチを担う:伍堂
・赤茶の特性を活かす:スロバッド
etc……
基本的にドローやサーチが弱いので、その部分を何かしらで補うタイプの構築をしている人が多いように感じた。もちろん単純に赤単に好きなレジェンドが居るから、というのも十分な理由である。

今回は弱点を補うのではなく、赤の長所を伸ばす方向でコンセプトを作ってみる。
多くの人は、MTGにおける赤のイメージといえば「火力」を思い浮かべるのではないだろうか。スライ、バーン、RDW等々、赤と言えば火力を使うデッキが一般的だし、《稲妻/Lightning Bolt》は赤の代名詞だろう。火力を最大限に活かすデッキと言えばバーンデッキ。

というわけでEDHにてバーンデッキを組もうというのがコンセプトに。
ライフ40×3人のEDHでバーン……無理すぎるので開幕から投げたくなる(えっ
火力の枚数は足りないし、何より時間がかかる。焼切る前に相手に動かれてしまうのが目に見えている。EDHにおいて赤が弱いと言われる所以でもある(長所をフォーマット特性に殺されている)。
しかし、相手にバーンダメージを与えながら時間を稼ぐ手段は存在する。「全体火力」だ。EDHで序盤に出てくるクリーチャー……つまりマナクリや《闇の腹心/Dark Confidant》のようなシステムクリーチャーはデッキの初速を担い、キープ基準にしている人も多いだろう。そこを全体火力で一層しようというわけだ。ただし、ここで《紅蓮地獄/Pyroclasm》や《鞭打ち炎/Whipflare》は使わない。これらは相手を減速させる、つまり相手の勝ちを遠ざけることは出来てもこちらの勝利には何ら貢献しないからだ。今回使うことにするのは《地震/Earthquake》や《火山の流弾/Volcanic Fallout》のような各クリーチャーと各プレイヤーにダメージを飛ばすタイプの火力。これなら相手のライフを減らす(=こちらの勝ち筋なので勝利へ近づく)ことと相手の減速を同時に行える。全体火力なら対戦相手が多い、というフォーマットの特徴は無視出来るのもポイント。《地震/Earthquake》なら各対戦相手に《猛火/Blaze》を撃ちこんでいるのと同じわけだ。

コンセプトが定まったところでジェネラル選択。
今回は赤単に限らず、赤絡みでこのコンセプトを活かせるジェネラルを探すことに。
実は既に赤単において「火力」をメインに添えて個性を出すことに成功しているジェネラルが存在する。《無情の碑出告/Heartless Hidetsugu》だ。彼はEDHにおいて数少ない相手を焼き殺すジェネラルとして有名であり、実に赤らしいジェネラルと言えよう。しかし、今回は《無情の碑出告/Heartless Hidetsugu》を選択しないこととした。理由はいくつかあるが、一番大きな理由はジェネラルの能力起動を軸にせざるを得ないことだ。碑出告自身は5マナでタフネス3のタップ能力持ちなので、必ず起動に隙が出来る。場に出たら真っ先に倒されるヘイトを持っているし、速攻を与えようとすると今度は貴重な枠を消費することになる。せっかくのバーンデッキなのにジェネラルを頑張って守らないと本領を発揮できない(しかも赤単で)というのがどうしても自分の中で引っかかった。碑出告の派手さは魅力的だが、研究されている先人方にお任せすることにした。

次の候補は《黄金夜の刃、ギセラ/Gisela, Blade of Goldnight》。
彼女は生きる《ラースの灼熱洞/Furnace of Rath》であり、しかも自分も巻き込む全体火力からコントローラーだけは守ってくれる。更に自身も10点パンチャーであり、飛行持ちなので《地震/Earthquake》系火力は回避出来る。なんとも相性が良い。
しかし、やはり気になる部分はある。まず彼女自身が7マナと重いこと。ダメージ倍化効果は優秀だが、初期コスト7マナはいささか遅い。ダメージ以外の除去耐性も無いので、想定しているほど戦場を支配し辛いのがネックだ。
最も気にかかる点は赤白という色だろう。ぶっちゃけ、あんまり組み合わさっても嬉しくない色である。赤の弱点であるサーチは《悟りの教示者/Enlightened Tutor》《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》など多少マシだがかなり範囲が限られ、ドローにいたっては白が赤におんぶ抱っこの状態。攻め手についても、優秀なクリーチャーを並べてゲドンのような簡易ロックをかけて押していく白と、防御は無視してやられる前にやる赤ではあまり噛み合っていない。これが通常フォーマットなら軽量火力+白のウィニーでかなり相性が良いのだが、EDHではその攻め手は魅力的でない。結局、赤白にしてもドローやサーチが弱いという問題はそのままである。もちろん赤単よりは良いのだが、せっかく色を足すならもう少し欲張りたいところ。

そこで登場するのが今回のジェネラルである。
そう、最近姿を見せ、EDH民から確実に「弱い」のレッテルを貼られたであろう存在……


《殺戮の神、モーギス/Mogis, God of Slaughter》


である。
その能力は、各対戦相手のアップキープに選択式(笑)で2点ダメージ(草)を飛ばすというもの。ちまたでは「劣化パーフォロス」「相手に選択権があるとかww」「ライフ40のEDHで2点ダメージっすか」等の硝酸(誤字)を浴びているようだ。

しかし、モーギスは今回のコンセプトに非常に合致したジェネラルなのである。

・毎ターン選択式の2点ダメージ
2点ずつとはいえ、相手のライフを削りきることがコンセプトならば有難い。ジェネラルが火力の不足を補ってくれるという意味では、《無情の碑出告/Heartless Hidetsugu》や《黄金夜の刃、ギセラ/Gisela, Blade of Goldnight》と変わらない活躍が期待できる。ネックになるのがクリーチャー1体の生贄でダメージを回避されるという点だが、全体火力でクリーチャーを薙ぎ払ってしまえば問題ない。

・4マナ
比較的軽くプレイしやすい。
序盤からコンスタントにダメージを刻んでくれることが期待出来る。

・破壊不能のエンチャント
“神”全般に言えるが、かなり高い除去耐性を持っている。
後述するが、全体リセットとの相性が良いのも○

・信心を受けて7/5に
《剣を鍬に/Swords to Plowshares》などを受けるようになるが、神唯一のパワー7である。
つまり、3発殴る事による統率者ダメージ狙いも出来るということ。赤や黒には色拘束の強いエンチャントが多いので、いざというときに信心を稼ぎやすいのもポイントが高い。

・赤黒
赤に加えて黒を持つわけだが、黒といえばサーチの色。赤単のネックだったサーチ不足を改善出来る。加えて《夜の囁き/Night’s Whisper》のような小回りの利くドロー、《フェアリーの忌み者/Faerie Macabre》のような使いやすい墓地対策も擁するため、非常に相性が良い。ネックはエンチャントに触れないことだが、墓地とアーティファクトに干渉可能なので十分である。

このようにモーギスの性質とコンセプトが上手く噛み合っている。

●カード選択
ジェネラルも決まったので、コンセプトに従ってカードの選択に入る。

★マナ加速
軽めのもの、色マナが出るもの、複数マナが出るものの三種をバランス良く。
赤単でアドを失うタイプの加速は弱いという記事を以前書いたが、今回はその手の加速も投入する(えっ
……というのもちゃんと理由は有って、黒のサーチが入ったことにより、マナ加速→ドローにきちんとつながる確率が高まったからである。逆に初速を落としてしまうと、マナクリを焼くのが遅れてしまい減速効率が下がってしまうのだ。
複数マナを生成するタイプのマナソースも重要である。構成上、X火力や重いスペルが増えるため、それらに安定して辿りつく必要があるためだ。
1マナしか伸びないようなマナファクトについては、色マナが出るもののみ採用した。具体的には《ラクドスの印鑑/Rakdos Signet》《耽溺のタリスマン/Talisman of Indulgence》《友なる石/Fellwar Stone》。4マナへのジャンプと、色拘束が強いカードの助けになる事を期待しての投入となる。

★ドロー
大雑把なドローを得意とする赤と小回りの利くドローを得意とする黒が合わさり最強に見える……かどうかは別として、赤単よりはかなり強化されている。「黒も大雑把なんですがそれは……」とか「ライフがマッハで減ってるやん」という突っ込みしか聞こえないのは内緒。
《ネクロポーテンス/Necropotence》や《ファイレクシアの闘技場/Phyrexian Arena》のような継続的なドローソースが一番の収穫。赤単だと《精神の眼/Mind’s Eye》とか《ウルザの青写真/Urza’s Blueprints》みたいな重い所しか無かったもので……

★サーチ
《吸血の教示者/Vampiric Tutor》《Demonic Tutor》が一番の収穫。《汚れた契約/Tainted Pact》もなかなか。赤にとっては、小回りの利くこれらはもちろん、重くとも欲しいものにアクセスできるもの(例えば《魔性の教示者/Diabolic Tutor》)でも十分ありがたい。
今回は軽めのサーチに加えて全体除去で守れてリセットの影響を受けづらい《リリアナ・ヴェス/Liliana Vess》も採用した。

★単体除去
メインは全体除去なのだが、ピンポイントで厄介なヤツを落とすためのピン除去も欲しい。何せ《地震/Earthquake》で《稲妻/Lightning Bolt》と同じダメージを飛ばすのには4マナもかかるのだ。
仮想敵としては《結界師ズアー/Zur the Enchanter》や《ネファリアの災い、ジェリーヴァ/Jeleva, Nephalia’s Scourge》のような飛んでてタフネス高めの奴らが挙げられる。これらを素早く落とすため、1マナ4点が見える《感電破/Galvanic Blast》、プレイヤーを焼けないが対青最強の《焼却/Combust》、ピッチで火力範囲外を落とせる《殺し/Snuff Out》を採用した。

★全体除去
コンセプト部分。プレイヤーにもダメージが跳ぶ除去を主体に。
重要なカードとしては《横揺れの地震/Rolling Earthquake》をピックアップ。飛行以外にダメージが通る数少ない地震である。お値段が中々吹っ飛んでいるのは御愛嬌。
また、《黒死病/Pestilence》を取れるという赤黒ならではのメリットがある。次元の混乱でシフトした《紅蓮炎血/Pyrohemia》もあるのだが、デッキに黒のトリプルシンボルの方が多いため火種を用意しやすいこと、2枚とも入れられることなど、多くの利点がある。

★置物除去
《汚損破/Vandalblast》など茶除去を嗜みに。
エンチャントをはじける《混沌のねじれ/Chaos Warp》の使いどころには気を付けたい。

★妨害
妨害……と言ってよいのか難しい所だが、《紅蓮光電の柱/Pyrostatic Pillar》と《呪文ショック/Spellshock》は強力なカード。チェインコンボ系を鈍らせるという意味で、今回は妨害枠に置いている。本体バーンはデッキコンセプトと合致しており、攻めに使えるので個人的にはかなり評価が高い。
また、こちらが遅いデッキなので、バーンには何ら貢献しないとはいえ《血染めの月/Blood Moon》は入れたい。前述のスペルショック系と併せてむかつき等に特に有効だ。なお、《月の大魔術師/Magus of the Moon》は火力で流れてしまうので不採用とした。

★その他
・《血の長の昇天/Bloodchief Ascension》
この人いつも《血の長の昇天/Bloodchief Ascension》使ってんな、とか言わないで(
モーギスとかなり相性が良く、1ターン回せば条件達成することも多い。スーサイドドローと全体火力でライフがマッハなこのデッキでは、ドレインはかなりありがたい。

・《悪疫/Pox》《死の雲/Death Cloud》《抹消/Obliterate》
このデッキの間接的なフィニッシャー。
いくらジェネラルがダメージを稼げるとはいえ、普通にドローして火力を撃ってでは手札も時間も足りない。マナクリーチャーやシステムクリーチャーを流してもマナファクトや土地は置かれていくので、いずれはマウントを取られてしまう。
だったら土地とかアーティファクトとか土地とか流せばいいじゃん、という発想でリセットを撃つことに。度々考察してきた抹消はもちろん、黒を加えることにより《悪疫/Pox》と《死の雲/Death Cloud》を獲得。これらはマナファクトにはあまり効かないかわりに手札を落とせるので、時間稼ぎとしては有効。直接火力としての側面も持っているのも素晴らしい。《抹消/Obliterate》撃っても生き残れるのはエンチャントであるモーギスならでは!(※元から破壊不能です)

・《ラースの灼熱洞/Furnace of Rath》《ラクドスの頌歌/Anthem of Rakdos》
バーンの味方である《ラースの灼熱洞/Furnace of Rath》。卓が殴らないデッキばかりならデメリットはあまり気にならない。トリプルシンボルなので良くも悪くも信心を稼ぐ点に注意したい。
ダメージ倍化系エンチャントとして、他にも《理由なき暴力/Gratuitous Violence》や《怒りの反射/Rage Reflection》があるが、いずれもクリーチャー依存でこのデッキとは相性が悪い。しかし、黒を加えたことにより新たな強力エンチャントを投入可能になった。《ラクドスの頌歌/Anthem of Rakdos》である。暴勇必須ではあるものの、自分だけ灼熱洞が弱いわけがない。こちらも信心を稼げるので、モーギスで殴る場合にも活かせそうだ。

・《極上の血/Exquisite Blood》《アスフォデルの灰色商人/Gray Merchant of Asphodel》
少し回してみると、このデッキのライフの減りが半端ないことが分かった(自明)
《地震/Earthquake》系の特性上フライヤーは残りやすいので、それなりに小突かれてライフを削られるケースが見られた。この点は、自分を焼きつつスーサイドドローする構成上仕方ない。最大の問題は、このデッキが相当遅いということである。
青黒系のデッキでもガンガンライフを払うことは多いが、それは「ライフなんて1でも残ってれば良い」を体現した構成になっているから許されることである。つまりスーサイドチックに動いてもコンボを決めるまで生きていればいいわけで、最低限のライフ保守手段だけでも十分なのだ。(その「最低限のライフ保守」はEDHのルールが勝手にやってくれる(ライフ2倍)ことが、アグレッシブなコンボデッキが強い理由でもあると思う。)
しかし相手を減速→モーギスで削る→リセットで更に場を抑え込む→モーギスでじわじわ……と悠長な勝ち手段がメインとなるこのデッキでは、序盤の小さな削りや不意に受けたダメージが後半響いてくることが多い。ライフ保守手段を少量入れたいのだが、これがなかなか難しい。回復のために枠を消費することは、その分火力やドローの枚数を削る事になり、ただでさえ薄めの勝ち筋が更に減ってしまう。
そこでふと「ダメージと回復を同時に行えば良い」という案が下りてくる。素晴らしいことに、黒にはドレインという要求を満たすカードが存在する。ドレインカードをいくつか試してみることに。最終的に投入されたのは、先述のようにモーギスとシナジーする《血の長の昇天/Bloodchief Ascension》、置物と相性が良い《アスフォデルの灰色商人/Gray Merchant of Asphodel》、ダメージが全部ドレインになる《極上の血/Exquisite Blood》、リセットと相性の良い《ワームとぐろエンジン/Wurmcoil Engine》となった。最後のはドレインではないが、殴りながらライフ回復出来るという意味では似ている。《極上の血/Exquisite Blood》は単体でドレインするわけではないのであまり入れたくないのだが、これ+モーギスでほぼライフの問題を解決出来るほど効果が高いのでなかなか抜けない困った奴である。ちなみに他の候補としては《吸魂/Syphon Soul》や《アーボーグの吸魂魔道士/Urborg Syphon-Mage》などもあった。特に前者は対多人数ドレインにしては珍しいダメージなので、《ラースの灼熱洞/Furnace of Rath》とシナジーするという地味なメリットがあったり。


以上でコンセプトとカード選出は大体終わったのでデッキとして形に。
後編はデッキリストと変なカードの補足、弱点などをつらつらと記述します。

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