※長文注意

EDHにおいて色を減らすということは選択肢を狭めているに他ならない。
5色は土地バランスが……というのは通常のフォーマットの話で、別に3色に1色を足したような5色なら問題ない。そもそも固有色の縛りは使える使えないの段階にかかってくるので、単純に使えるカードプールが広がるのはメリットでしかない。混成カードやφマナも含めると尚更である。

じゃあEDHでジェネラルは《始祖ドラゴンの末裔/Scion of the Ur-Dragon》とか《スリヴァーの女王/Sliver Queen》ばかりかといえばそうではない。ジェネラルという常に手札にあるクリーチャーを軸に据えたデッキ構成にする、色対策や特殊地形対策で色を減らすことでの不利を無くす、自分の嫁カードをジェネラルにしたい、などなど、各々理由があって個々のデッキを使っている。

とはいえ、色を絞るからには必ず「得手」「不得手」が出てくる。
そこを理解すれば、「デッキ構築の際の取捨選択」「何故勝てないのか」というような悩ましい点に対する回答となり得るのではないか。そんな思いを抱き、ひとまず現在構想している「赤単」について考察してみることとする。

●“赤”の特徴
MTGにおける赤の特徴といえば、
◎得意:火力、茶除去、土地破壊、混沌、速攻、パワー強化
×苦手:エンチャント除去、手札干渉、墓地干渉、防御
といったようなキーワードが並ぶと思われるが、このままでは漠然としすぎている。
そして、ヴィンテージとほぼ同等のカードプールを持つEDHでは、色の役割は非常に多岐に渡る。昔の役割変更前のカードも使えるからだ。
そこで、EDHでのデッキ構築の際に考慮される役割を中心として、しっかり見てみることとする。

★マナ加速

>パーマネントによるもの
恒久的なマナ加速は苦手だが、瞬間的にマナを出すカードはいくつか存在する。
《炎の編み込み/Braid of Fire》《マナの残響/Mana Echoes》など、条件や制限が付いたものや、《石炭焚き/Coal Stoker》《ウラブラスクの僧侶/Priest of Urabrask》などの一瞬だけマナが出るものがほとんど。また、ゴブリンを参照する《スカークの探鉱者/Skirk Prospector》やエレメンタルを参照する《煙束ね/Smokebraider》など、部族限定のものが少数存在する。しかし、いずれもマナ加速というには苦しいため、恒久的なマナソースの確保は苦手だろう。

>呪文によるもの
黒→赤と移ってきたリチュアル系の呪文が存在するため、黒に次いで得意としている。
《炎の儀式/Rite of Flame》《捨て身の儀式/Desperate Ritual》《煮えたぎる歌/Seething Song》など、瞬間的なマナ増加は選択肢も豊富。瞬間的なマナの取り扱いには優れていると言えよう。

★除去(ボードコントロール)

>対クリーチャー
火力呪文の色なので、焼くことならば大得意。
「EDHでの火力は弱い」といった評判が広まっているためか、赤のクリーチャー除去は他の色と比べても微妙……という意見も見られるが、私はそうは考えていない。
確かに《稲妻/Lightning Bolt》はライフ40のプレイヤーに対しては《焦熱の槍/Scorching Spear》といい勝負だが、対クリーチャーの除去としてみれば、決して他の色の除去に劣っては居ない。火力の弱点は落とせるクリーチャーのタフネスに制限がかかる事だが、EDHにおいて単体除去をぶつけたい相手の多くは低タフネスであることが多いからだ。システムクリーチャー、軽量ジェネラル、コンボパーツと、むしろ3点の《稲妻/Lightning Bolt》ならばオーバーキルできるクリーチャーは沢山居る。《闇の腹心/Dark Confidant》《スレイベンの守護者、サリア/Thalia, Guardian of Thraben》《ラノワールの使者ロフェロス/Rofellos, Llanowar Emissary》etc……特に序盤で倒したい生物の多くはタフネス1だったりする。2点あれば《トレストの密偵長、エドリック/Edric, Spymaster of Trest》《鏡割りのキキジキ/Kiki-Jiki, Mirror Breaker》のような厄介なレジェンドにも手が出せる。3点あれば《金粉のドレイク/Gilded Drake》に届く。
もちろん、デカブツにも厄介な奴らは存在するため、それらに手を出せなくて歯がゆい思いをする場合もある。しかし、重い相手には重い除去、軽量でない大火力やX火力もあるので、決して除去できないわけではない。実は《地割れ/Fissure》のような火力以外の除去も存在したりする。
更に赤の利点として、厄介なシステムクリーチャーを多く有する白や青と対抗色の関係であることが挙げられる。《焼却/Combust》、《乾燥/Parch》、《稲妻の矢/Lightning Dart》など、対白青火力が豊富に存在するので、青や白のクリーチャーならば2マナ以下で対処可能なのである。《結界師ズアー/Zur the Enchanter》、《静寂の守り手、リンヴァーラ/Linvala, Keeper of Silence》、《潮吹きの暴君/Tidespout Tyrant》(《焼却/Combust》のみ)などにピンポイントに刺せるのは大きい。もちろん、対青最強の《赤霊破/Red Elemental Blast》《紅蓮破/Pyroblast》《特務魔道士ヤヤ・バラード/Jaya Ballard, Task Mage》も忘れてはいけない。
《稲妻/Lightning Bolt》のような呪文以外にも、ティムやCIP除去を持つクリーチャーが豊富なのも赤の特徴だ。《火花鍛冶/Sparksmith》《火炎舌のカヴー/Flametongue Kavu》などは高タフネスにも手を出せる優秀なクリーチャーである。

以上は単体除去の話だが、全体除去はより赤に地の利がある分野だ。
EDHでの全体除去は場を流して不利を覆すだけでなく、マナクリやシステムクリーチャーを流してテンポを稼ぐ意味が大きい。その場面ならば《紅蓮地獄/Pyroclasm》は《神の怒り/Wrath of God》を超える最強の全体除去である。軽いものの中でも《電謀/Electrickery》《火山の流弾/Volcanic Fallout》などなど、自分のデッキに合わせて選択出来るのも良い点だ。重いものは《火山の乱暴者/Volcano Hellion》《カー峠の災い魔/Scourge of Kher Ridges》を始めとした場を支配出来るものが多く、こちらも頼りになるだろう。

総じて、EDHにおける対クリーチャー性能は高いといえる。火力の性質上、特に序盤の除去ならば一番強い色だろう。

>対アーティファクト
元祖茶破壊の色だけあって、アーティファクト破壊は大得意である。
意外にも最近登場した《溶解/Smelt》が最も軽かったりするのだが、基本の《粉砕/Shatter》やその亜種を多種多様に構えている。《蛮行ゴブリン/Goblin Vandal》《ゴリラのシャーマン/Gorilla Shaman》《ヴィーアシーノの異端者/Viashino Heretic》など、軽量クリーチャーによる茶除去はより得意とする。《溶融/Meltdown》《荒残/Rack and Ruin》といった複数に手を出せる除去も魅力だ。茶除去に関しては、緑と同等かそれ以上の対処能力を持っていると言える。

>対エンチャント
赤の弱点であり、単体ではほぼ触れない。
EDHにおいてはアーティファクト>エンチャントな遭遇率であるが、危険度で言えばエンチャントの方が高い。コンボの軸になるものやロックをかけてくるものが多く、いざというときに手を出せないのは辛い。アーティファクトに頼るのが最も有効だろう。対エンチャントを考慮すると、エンチャントにローリスクで触れる《混沌のねじれ/Chaos Warp》は赤にとって非常に重要なカードである。

>対土地
土地破壊の色として歩んできただけあって得意……と言いたいが、《ハルマゲドン/Armageddon》有する白、《Sinkhole》有する黒、《冬の抱擁/Winter’s Grasp》有する緑など、他の色も負けてはいない。
多人数戦であるEDHにおいては複数の土地に触れるカードが強いのだが、その点ではマスデスの《ハルマゲドン/Armageddon》有する白が一番得意と言っても良い。しかし、赤にも《さし迫った災難/Impending Disaster》《荒廃の思考/Thoughts of Ruin》《爆裂+破綻/Boom/Bust》などの「ゲドン亜種」が存在しており、白より癖が強いものの土地破壊が得意だと名乗っていいだろう。土地限定ではないが、《壊滅/Devastation》《燎原の火/Wildfire》《抹消/Obliterate》などのマスデストラクションも豊富に存在しており、バリエーションの多さでいえば赤に部がある。

★妨害

>パーマネントによるもの
実は赤はパーマネントによる制圧が得意である。
最も強烈なのは《血染めの月/Blood Moon》だろう。3マナで「一人倒せる」可能性もある強力なカードだ。このほかにも、《締め付け/Stranglehold》《大いなる恐慌/Widespread Panic》《紅蓮光電の柱/Pyrostatic Pillar》など、特定の動作やカードに対して強烈な制約を与えるカードが多い。それらの多くが軽めなこと、そしてEDH環境では激烈に刺さること(多色、サーチ多数、軽い呪文強い)から、相手を減速させる・黙らせる方面での妨害はかなり得意とされる。

>呪文によるもの
呪文による妨害は役割としていない。もっとも、ハンデスがあまり強くないEDHではこの役割はほぼ青のものだが。
しかし、赤は対青に関しては《紅蓮破/Pyroblast》《跳ね返りの罠/Ricochet Trap》など若干の干渉手段を持つ。青が強色であることを考えると無視できない利点だ。
他にも、間接的ではあるが《余韻/Reverberate》や《分流/Shunt》など、青の役割に類似した機能をもつスペルを有している。赤というと攻撃一直線&火力なイメージがあるが、見た目以上に器用なのだ。特に《余韻/Reverberate》は《再活性/Reanimate》や《歯と爪/Tooth and Nail》をコピーして先取りしたりできるため、自身の苦手な分野に手を出せるユーティリティカードになり得る。

★ドロー・サーチ

>ドロー
白よりはマシだが、かなり苦手。単純にアドバンテージを取れるドローが無いのである。
《野生の勘/Wild Guess》や《信仰無き物あさり/Faithless Looting》などのルーター系能力を獲得したが、これらは手札交換であって、手札を補充するためのドローとして数えるには厳しい。
ヴィンテージ環境のEDHでは、赤の強力なドロー《Wheel of Fortune》が使用できる。後継の《魂の再鍛/Reforge the Soul》《ドラゴン魔道士/Dragon Mage》なども強力なドローだろう。これら7ドローは確かに手札を補充出来るが、相手にも7ドローさせてしまうことが問題となる。相手の展開力の方が高ければむしろ手札を贈呈していることになってしまうし、こちらはドローの為にマナを使っているため、先に補充された手札を活かし始めるのは相手であるケースが多い。単純に使ってアドバンテージを取れる場面は少ないのだ。
7ドローといえばドローが大得意な青にも存在する。《Timetwister》や《意外な授かり物/Windfall》がそれだ。これらも青含む一部のデッキで大活躍しているが、だからといって“赤いデッキの《Wheel of Fortune》”が超強いドローというわけではない。青は7ドローの中にピッチカウンターがあればターンを渡しても「構える」ことが出来るし、最悪青1マナを立てておけばカウンターを匂わすことも出来る。赤はそこまで器用なことは出来ない。そしてなにより、青は好きなタイミングで7ドローにアクセス出来るチューターがある。これにより、自分が一番アドを稼げる場面で7ドローを撃ちやすい。赤も青も大振りな7ドローに違いないが、その周りの環境は大きく違う。
7ドローは確かに強力だが、それが自分にとって有益かどうかはまた別の話。使うならばデッキの構成から意識する必要があるのではないだろうか。事実、《Timetwister》だって青いデッキなら必ず入るわけではないのだ。
(なんとなくブレイズの言葉が思い浮かんだので載せてみる。私の好きなフレイバーだったり)

それがあんたに提供してくれるのは、あんたが欲しがっているものよ。あんたに必要なものというわけじゃないわよ。 ――― 狂気を招く者ブレイズ

>サーチ
5色中最も苦手だと言ってよい。
まともなチューターと言えるのは《ギャンブル/Gamble》程度。これもアドを失う上に運絡みという厄介なもの。仲が良いはずのアーティファクトにすらアクセスし辛い……
《帝国の徴募兵/Imperial Recruiter》はお高いカードだが、赤とは思えない優秀なサーチクリーチャーである。デッキ次第ではすんなり入るだろう。
例外として、《ゴブリンの女看守/Goblin Matron》《ゴブリン徴募兵/Goblin Recruiter》《モグ捕り人/Moggcatcher》など、ゴブリンを引っ張ってくることに関しては得意。数少ないサーチルートなので活かしていきたい。幸いゴブリンには優秀なものが多いので、ゴブリン中心に組むのは良い選択だと思われる。

★コンボ絡み

>保有コンボ
赤単でも可能なコンボはいくつか存在する。
最も有名なのは《鏡割りのキキジキ/Kiki-Jiki, Mirror Breaker》+《士気溢れる徴集兵/Zealous Conscripts》の2枚コンボだろう。赤でクリーチャー2体のみで成立するため、、専用の枠を取ることも検討できる。しかし、キキジキはともかく徴収兵はややパワー不足であること、先述のようにドローもサーチも苦手なことから、2枚コンボであっても2/99を揃えるのがなかなかに厳しい。クリーチャー除去で簡単に対処されてしまうのもネック。《欠片の双子/Splinter Twin》でも可能だが、キキジキ以上に場を選ぶカードであり、且つサーチもしづらくなる。
キキジキ絡みでは《稲妻造り士/Lightning Crafter》を含めたコンボも有名。こちらはゴブリンのみで成立するため、サーチし辛いという弱点を少し克服出来ている。相変わらず除去や妨害に弱いのが難点か。
《鏡割りのキキジキ/Kiki-Jiki, Mirror Breaker》や《群衆の親分、クレンコ/Krenko, Mob Boss》は伝説のゴブリンにしてコンボの軸となることが多く、これらをジェネラルすることは赤でコンボを仕掛けに行くならば良い選択ではないだろうか。
全体的にみると、赤いコンボパーツカードは他の色と組み合わせてこそというものが多く、単色で見たコンボ性能は低い。サーチの少なさも痛いところ。

>対コンボ性能
まず、クリーチャーを使ったものに対しては強い。除去能力の高さを活かそう。
アーティファクト絡みのものに対しても概ね耐性がある。
《血染めの月/Blood Moon》《紅蓮光電の柱/Pyrostatic Pillar》などの置物の存在から、《むかつき/Ad Nauseam》辺りにもある程度干渉することは可能。
エンチャントに触れないので、《食物連鎖/Food Chain》を起点とするようなコンボは対処がほぼ無理。
墓地干渉能力は全色中最弱なので、ウーズコンボを始めとする墓地活用コンボは大の苦手。

コンボに対しては得意不得意がはっきり分かれる。触りにくいものも多いので、アーティファクトを用いて補強したい所。

●総じて
得意なこと苦手なことを整理したところで、赤単色のデッキを組む場合どうすれば良いかを検討してみる。EDHでは、単色においても“茶色”という2色目の使用が許可されているので、これをどう利用するかが重要になってくる。

・マナ加速は瞬間的なもののみ得意
・除去はエンチャント以外なら優秀
・妨害能力に優れる
・ドローとサーチが弱い
・コンボ能力はパーツ性能、揃えやすさともに低め
・墓地に干渉出来ない

この特徴を見て、どういうアプローチをするかは人それぞれだろう。
私自身まだ明確な答えを見出せてないことを考えた上での今回の内容なので、整理を踏まえて検討を進めようと考えている。
今回は単色前提で見てみたが、単色の特徴を見たうえで「ドローやサーチに優れる青と組む」という方向を探るのもありだと思う。逆に言えば、「単色であることのメリット」を探す必要もあるだろう(ジェネラルの選択など)。



長文読んでいただきありがとうございました。
結論がまとまってないうえ変な文章になっている箇所もあるかと思いますが、何かの為になれば。

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