※長文注意
※誤字・脱字、文法が変な箇所などご容赦を……気づいたら直します

ターボバランスというデッキをご存じだろうか。
サクリファイスランドを4,5枚並べて、それらを一気にサクってマナを捻出。同時に自分の場をまっさらにして《平等化/Balancing Act》の効果を高める。あとはハンドも場もぼろぼろになった相手に対して浮いたマナから《土を食うもの/Terravore》とか《藪跳ねアヌーリッド/Anurid Brushhopper》とかを繰り出してそのまま倒すというデッキ。
私はこのデッキがとても好きだった。始めは友人が使っているのを見ていただけだったが、トーナメントレベルではないようなタップインの土地から大技をぶっ放してフィニッシャーで蹂躙するという動きが大層気に入って、自分でも回すようになっていた。

事の始めはデュエルコマンダーで《ハルマゲドン/Armageddon》が強いという話を目にしたとき。私もゲドン系のリセットを使うデッキを考え始めていた。そこでふと、「土地だけじゃなく全部吹っ飛ばす《平等化/Balancing Act》は強いんじゃない?」と思い始めた。似た効果で軽い《天秤/Balance》は禁止カードだし、コスト2倍とはいえ多人数戦でもタイマンと変わらないパワーを発揮できそうではある。《ハルマゲドン/Armageddon》や《大変動/Cataclysm》などとの大きな違いは、それらがフィニッシャー(土地吹っ飛ばして圧殺できるクリーチャーとか、エンチャントとか)を展開してから撃つ動きが出来るのに対し、《平等化/Balancing Act》はむしろ場が整っていない方が効果を発揮するということ。必然的にフィニッシャーは後出しになってしまうためマナや打消しのケアにより手がかかるが、多くのリセットで触れないエンチャントやプレインズウォーカーも流せるメリットもある。
そして後出しするフィニッシャーであるが、ここでEDH固有の利点が出てくる。統率者領域にいつでも出せるフィニッシャーが居るじゃないか!手札0、パーマネント0、という《平等化/Balancing Act》が最も輝く状況を作り出してもなおフィニッシャーを悠々とキャスト出来る。本来のターボバランスでは「十分なマナを出せる土地」「フィニッシャー」「平等化」の3つを揃える必要があったのが、EDHなら土地とマナパーツを並べて《平等化/Balancing Act》さえ引き込めばいい。
かくして《平等化/Balancing Act》に可能性を感じた私はバランスデッキの構築に走るのであった。そしてこの時点で《ハルマゲドン/Armageddon》とデュエルコマンダーの構想は彼方へと消え去っていた。

●EDHでターボバランスを組む上での問題

しかしカードを漁りつつ脳内で構築をしていると、すぐに大きな問題にぶつかることになる。ハイランダーの仕様ゆえ、パーツが不足してしまうのだ。

☆マナパーツの不足
ターボバランスの要となるサクリファイスランドは、フォールンエンパイアに5種類、インベイジョンに5種類、オデッセイに5種類、それぞれサイクルとして存在している。これにミラージュの《水晶鉱脈/Crystal Vein》とインベイジョンアンコの《遺跡発掘現場/Archaeological Dig》を加えて計17枚が存在する。しかし17枚全てを使えるわけではない。統率者の固有色の問題が浮かび上がってくる。特に有効色のマナを出すインベイジョンのサイクルはこれに引っかかりやすく、有効3色のジェネラルでも1枚、ウェッジ3色のジェネラルなら1枚も使えないという状態である。例えば、白青緑のジェネラルでデッキを組んだ場合に使えるサクリファイスランドは、
《トロウケアの廃墟/Ruins of Trokair》《シヴィエルナイトの寺院/Svyelunite Temple》《ヘイヴンウッドの古戦場/Havenwood Battleground》《用水路/Irrigation Ditch》《見捨てられた前哨地/Abandoned Outpost》《海底の瓦礫/Seafloor Debris》《森林地の廃墟/Timberland Ruins》《水晶鉱脈/Crystal Vein》《遺跡発掘現場/Archaeological Dig》
以上たったの9種類である。しかもEDHなので、土地30~40中の9枚である。自分の場を綺麗にしつつ《平等化/Balancing Act》を撃ちたいのに、サクリファイスランドの枚数がこれでは話にならない。しかも、オデッセイのものはマナが増えないため、バランスを決められるまでマナが伸びるかどうか危うい。インベイジョンのサクリファイスランドなら5枚並べばサクって10マナでそのまま決められるが、現状見る限りは土地5枚じゃ7マナくらいしか出なさそうだ。
この問題を解決するには、土地以外の部分に頼るのが良さそうである。幸い、ヴィンテージフォーマットのEDHなら強いアーティファクトがたくさんある。《ライオンの瞳のダイアモンド/Lion’s Eye Diamond》、《睡蓮の花/Lotus Bloom》、《水蓮の花びら/Lotus Petal》、これらはサクってマナが出る上土地プレイとは別に設置出来る為、ターボバランスの動きにマッチしているといえる。アーティファクト以外にも、《野生の朗詠者/Wild Cantor》や《熱心すぎる弟子/Overeager Apprentice》といったクリーチャー達も「置きリチュアル」としての仕事が出来る。これらを多く採用することで、ようやくマナの捻出がある程度安定するだろう。

☆土地の不足からなる問題
上と関連しているが、サクリファイスランドの枚数が限られる以上、残りは他の土地を入れることになる。が、この土地が《平等化/Balancing Act》を撃つには邪魔なのである。《平等化/Balancing Act》は出来るだけパーマネントを減らしてから撃つことで意味があるカードであり、基本土地3枚残っている状況で撃っても相手に復帰されるだけである。それどころか、相手がこっちのフィニッシャーより強い生物や置物を残してきたらなんのために《平等化/Balancing Act》を撃ったのか分からなくなる。出来るだけ、こっちのパーマネントは無い方が良い。しかし、仮に5色デッキだとしても入れられるサクリファイスランドは17枚。土地の枚数を1/3の33と仮定しても半分はサクれない土地が入る事になる。セットランドは免れないだろう。もちろん、《Zuran Orb》や《ギックスのかぎ爪/Claws of Gix》、《大いなるガルガドン/Greater Gargadon》で処理するという方法もある。しかし、結局これらを使うということは必要なコンボパーツが増えているということであり、コンボ自体の質を下げているともいえる。《大いなるガルガドン/Greater Gargadon》は妨害されにくいうえクリーチャーやアーティファクトもサクれるため評価できるが、他のはライフを得るという微妙な効果で、かぎ爪に至ってはマナ喰いである。土地をサクリファイスランド化する《資源の浪費/Squandered Resources》や《汚物の雨/Rain of Filth》はデッキに合っているが、浪費はそれ自身がパーマネントとして残るという欠点がある。結局《汚物の雨/Rain of Filth》or《大いなるガルガドン/Greater Gargadon》のような選択型コンボパーツが増えてしまうだけであり、あまり問題解決になっていない。


そんなこんなで、撃つ速度も撃った時の効果も微妙なデッキが出来上がる未来しか見えず、ターボバランス案は一時頓挫していた。そもそも、全然ターボじゃないし。しかしある時、MTGwikiを眺めていると、とあるデッキリストが目に留まる。

“サニーサイドアップ”

どんなデッキかというと、《彩色の星/Chromatic Star》などのサクるドローパーツと《遺跡発掘現場/Archaeological Dig》などのサクるマナパーツでマナと手札を補充し《第二の日の出/Second Sunrise》《信仰の見返り/Faith’s Reward》を撃つ。するとドローパーツとマナパーツがアンタップで戻ってくるのでこれをぐるぐる回すというもの。


……あれ、これパーツ似てない?

ターボバランスもサクるマナパーツを使うし、処理できるフィルター兼ドローパーツとして《彩色の宝球/Chromatic Sphere》系統は良く投入されていた。つまり、ほとんど構成を変えずにすんなり《第二の日の出/Second Sunrise》《信仰の見返り/Faith’s Reward》を入れられるんじゃないかと。
サニーサイドアップのコンボは「マナパーツでマナを捻出し、ドローパーツでライブラリーを掘り下げる」という動き。日の出を撃つたびに場や手札が充実していき、最終的にはループに入る。注目したいのは、パーツはバランスと似ているが、こっちは場を整えていくため、場に土地が残ることで問題が生じることはないということ。
つまり何を思いついたかというと、「場にサクれない土地が残っているような状況なら目玉焼きコンボで勝ちに行けばいい」「目玉焼きコンボはドローによる回転力もあるので、ループまで行かなくてもそこから平等化ルートに行けるかもしれない」というアプローチ。“ターボ”バランス出来るときはバランスとして、出来ずに邪魔な土地含めがずらずら並ぶようなら目玉焼きとして動けばいい、どうせパーツは共通なんだから、ということ。しかもキーカードはどちらも3マナor 4マナの白のソーサリーorインスタント。《神秘の教示者/Mystical Tutor》のような共通のチューターと共通のマナ基盤が使える。
というわけで早速サニーサイドアップが組めるかどうか、そして上手くハイブリッド出来るかどうか検討することに。

●EDHでサニーサイドアップを組む上での問題点

目玉焼きコンボの詳細を簡単に記載すると、1回日の出を撃っただけでは手札や場が充実するだけに過ぎないので、当然日の出を複数回撃つ必要がある。そして、最終的には日の出をループさせることがデッキの目標となる。
日の出を複数回撃つために、デッキに日の出をフル投入し、キャントリップアーティファクト(ドローパーツ)で引き込むこととなる。当然この段階で引けずに自爆する可能性もある。無事引いてドローもマナも回転力が高まってきたら、《妖術師のガラクタ/Conjurer’s Bauble》で墓地の日の出をライブラリーに戻し、フェッチ等のシャッフルなどと合わせて引き込むことを狙う。最終的にデッキを引ききるほどのパーツを並べられれば、ガラクタで戻した日の出をすぐ引き込むことが可能になり、あとはループ中に《黄鉄の呪文爆弾/Pyrite Spellbomb》や《セファリッドの円形競技場/Cephalid Coliseum》を仕込めば勝つことが出来る。
目玉焼きの動きを解説した時点で誰もが気付くが、EDHでこのループは度台無理な話である。日の出は見返りを併せても2/99で、ドローパーツも枚数が減っている。ライブラリーに戻した日の出を引き込むことはまず不可能である。
……が、引き込まなくともループする手段は存在する。《写本裁断機/Codex Shredder》を使えばよい。この機械は5マナタップで《Regrowth》を撃てるので、マナパーツから8マナor 9マナ捻出出来る状況ならば回収+キャストで確定ループに入れる。しかし、このループは容易に達成できるものではない。マナが出ないからである。詳しい原因は↓の項目で。

●ハイブリッドすることの問題点

一見パーツが似ているターボバランスとサニーサイドアップであるが、一つ大きな違いが存在する。サニーサイドアップはサクって日の出で戻ってきたマナパーツを再利用するため、「アンタップインするマナパーツ」のみを用いる。ドローパーツも同様。つまり《遺跡発掘現場/Archaeological Dig》はOKだが《古き泉/Ancient Spring》はダメ、《彩色の星/Chromatic Star》はOKだが《テラリオン/Terrarion》はダメ、ということ。
……全然ダメじゃないか。
ターボバランスで強い2マナ捻出のタップインサクリファイスランドはサニーサイドアップでは使えない。このせいで目玉焼きループ用のマナを捻出しづらい。元のデッキは日の出用のマナさえパーツから出ればループに入れる可能性があったが、上で述べたようにEDHでは《写本裁断機/Codex Shredder》ループのために最低8マナも要る。土地が使えられればデッキ内のパーツ総数がかなり水増し出来、しかも土地プレイ+非土地マナパーツプレイで高速で場を整えられるが、非土地マナパーツだけでは揃えるのが(速度的にも手札枚数的にも)難しい。

と考えていたところに、この問題を解決する神パーツが降臨する。

Amulet of Vigor / 精力の護符 (1)
アーティファクト

あなたのコントロール下で、パーマネントが1つタップ状態で戦場に出るたび、それをアンタップする。

これが置いてあればサクリファイスランドがアンタップ状態で戻ってくるじゃないか!
しかもほぞでサーチ容易、序盤に置ければタップインのもっさり感も解消できる。素晴らしい。ジェイスくじのゴミとしてボックスに大量に眠っているし。

結果的に目玉焼きのコンボパーツが1つ増えた形になるが、日の出以外は《写本裁断機/Codex Shredder》も《精力の護符/Amulet of Vigor》もほぞでサーチ容易なので何とかなるだろうと考え、これを使って構築していくことにする。

●色の選択

5色一択だと思われる。サクリファイスランド増量、《卵》系フル投入可能、《万華石/Kaleidostone》投入可能、チューター増量可能、など利点しかない。
ジェネラルは《平等化/Balancing Act》後のフィニッシャーになり得るかどうかとヘイトの二点を考慮する。5色なのに変なコンボをするデッキなので、出来るだけひっそりとしていた方が良い。この観点で《始祖ドラゴンの末裔/Scion of the Ur-Dragon》は回避。《アトガトグ/Atogatog》とか逆に怪しすぎるのもパス。フィニッシャーになり得るかという観点では、7点×3発で倒せるパワー7は大きな利点である。スリヴァー3体が該当するが、ここでは《スリヴァーの女王/Sliver Queen》を採用する。手持無沙汰な時に防御能力を発揮できること、《スリヴァーの首領/Sliver Overlord》と比べて無限マナでの殺意が低いと思われることが理由。あと単純に好きだから。5色なんて組んだことないからこの辺はわりと適当である。

●カードの選択

ようやく構築の段階に。

☆マナパーツ
サクって場から消えるマナ加速を中心に。LEDとロータス系はキーとなる。
クリーチャーでは1マナの《野生の朗詠者/Wild Cantor》と《ほくちの壁/Tinder Wall》が優秀。3マナの《基底スリヴァー/Basal Sliver》や《血の臣下/Blood Vassal》、《熱心すぎる弟子/Overeager Apprentice》もあるが、そこは代わりに《レイモス》シリーズを投入する。ちょっと重いけど普通のマナファクトとしても使え、いざというとき2マナ出るとかもう最高だな!

☆ドローパーツ
ほぞを中心に。《万華石/Kaleidostone》は2マナだが最後にフィニッシャー用のマナを1回でフィルターできるので優秀。《黄鉄の呪文爆弾/Pyrite Spellbomb》はドロー、除去、フィニッシャーを兼ねるナイスガイ。
ほぞ以外には《意外な授かり物/Windfall》《Wheel of Fortune》《記憶の壺/Memory Jar》の7ドローを採用する。どうしても手が尽きることがあるし、軽量パーツをばら撒く→7ドローは強いはず。墓地が混ざるのは嫌だったので、《Timetwister》系は不採用とした。

☆コンボパーツ
《平等化/Balancing Act》《第二の日の出/Second Sunrise》《信仰の見返り/Faith’s Reward》。
それに神ほぞ《精力の護符/Amulet of Vigor》と《写本裁断機/Codex Shredder》。
これ以外では《オーリオックの廃品回収者/Auriok Salvagers》を採用。普通にアドを稼げるし、LEDとのサルベイジャーコンボ→ジェネラルで無限トークンor《黄鉄の呪文爆弾/Pyrite Spellbomb》で勝ちが狙える。

☆サーチ
重要なのは場に《睡蓮の花/Lotus Bloom》やキーパーツを引っ張ってこられる《Transmute Artifact》《作り直し/Reshape》《粗石の魔道士/Trinket Mage》の3枚。黒チューター以外には、《平等化/Balancing Act》や《第二の日の出/Second Sunrise》にアクセスできる《神秘の教示者/Mystical Tutor》《神秘の指導/Mystical Teachings》(インスタントのみ)はもちろん採用。他で強いのが《腹黒い夢/Insidious Dreams》と《求道者テゼレット/Tezzeret the Seeker》。《腹黒い夢/Insidious Dreams》は一発で複数のコンボパーツを積みこめ、このデッキならドローほぞですぐに引き込める。テゼレットはアーティファクト祭りのこのデッキなら言うまでもないが、-Xで自殺可能なので、日の出と組み合わせるとさらに強い
(※日の出だとPWは戻ってきません。《信仰の見返り/Faith’s Reward》なら戻ってきますね)

☆除去
速いデッキではないので、少し除去枠を取っておく。
《紅蓮地獄/Pyroclasm》《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives》は軽くて場を減速させられるだろう。《神の怒り/Wrath of God》も入れておく。置物除去には《古えの遺恨/Ancient Grudge》と《天啓の光/Ray of Revelation》のフラッシュバックコンビを採用。《無のロッド/Null Rod》や《石のような静寂/Stony Silence》、《血染めの月/Blood Moon》で吐血するのですみやかに割ってさしあげよう。

☆その他
軽量カウンターとして《払拭/Dispel》《白鳥の歌/Swan Song》《否定の契約/Pact of Negation》、コンボ用の《沈黙/Silence》《秋の帳/Autumn’s Veil》《赤霊破/Red Elemental Blast》、リカバリー用の《有毒の蘇生/Noxious Revival》《蔵の開放/Open the Vaults》を投入。
やや遅めのデッキなのでカウンターの増量も考えたが、ドローパーツで引き込みたくないので最低限にした。

☆土地
サクリファイスランドは大半を投入。オデッセイのものはやや弱いので枚数を調整。
他の土地も《セファリッドの円形競技場/Cephalid Coliseum》、《埋没した廃墟/Buried Ruin》、《地平線の梢/Horizon Canopy》など自滅できるものに。目玉焼きルートではフェッチや《幽霊街/Ghost Quarter》が強いのでそれらも投入。ただし枚数は最低限に。
いろんな土地の役目を果たせる《ヴェズーヴァ/Vesuva》と《演劇の舞台/Thespian’s Stage》はかなり優秀。上手く使っていきたい。


以上を中心に組めば理想のデッキが出来上がるはずっ……
このときは盲目的に可能性を信じてデッキ作成に取り掛かるのであった(フラグ)

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